2021年版☆新型コロナが【アイドルの収入と生活】に与える影響

音楽業界全体で見ても、アイドルは特に人材の入れ替わりが激しいジャンル。

順風満帆に見えても突然引退するアイドルは後を絶たず、そのためどの事務所も先を見越して常時アイドルを募集している状態である。

だが、今回のコロナ禍で最も不運な目に遭ってしまったのは、新規立ち上げグループのオーディションで採用され、歌やダンスのレッスンも完璧に仕上げていたアイドル。

お披露目のタイミングと緊急事態宣言が重なってしまったためにデビューが延期になってしまい、待機期間中にSNSや配信アプリ等での新規ファン獲得に務めてはいるものの、予定が大幅に狂ったダメージは大きい。

 

 

また、既存の現役アイドルにとって痛手なのは「アイドル活動から派生した副業」の激減。

元々、一部のメジャーアイドル以外はライブやメディアなどのいわゆる芸能活動のみで食べていくことができないため、企業イベントのコンパニオン・スタジオ撮影会・飲食店へのゲスト出勤などで足りない収入を補っていた。

(場合によってはそれをアイドル活動に含めてしまうのが、「地下アイドルで食べてます」と言い切ってしまう子が増えている原因である)

 

そのような副業が不可能になったことで路頭に迷うアイドルが続出しており、Uber Eatsへの登録を真剣に考えている子もいる。

運営側も苦しいのは大前提だが、新規デビューの子にしろ既存のアイドルにしろ、大人の指示で仕事をもらうしかない立場の彼女達は大変なのが現状。

 

「アイドルで食べていく」

という確固たる信念を持っている子にとって、アフターコロナ時代のアイドル界は相当厳しい環境になってしまったが、この逆境からの気持ちの立て直しこそが真の意味での「コロナに勝つ」ということになるだろう。

 

アイドルを目指すためのハードルが下がる!?

アイドル業界に逆風が吹いている事実を冒頭で述べておきながら矛盾しているかもしれないが、アイドル志望者自体はコロナ以前と比べても横ばいか、もしくは「微増」すると言われている

今から新規でアイドルを目指す子にとって意外なプラス材料になっているのが、他でもない、リモートによる打ち合わせの普及。

リモートだと交通費がかからないのは大きい

駅に停車している新幹線

自分で収入を得ていない10代の少女がアイドルの面接やオーディションを受ける際のネックの1つが「交通費」だった。

例えば大阪在住の大人の感覚だと、大阪のオーディションなら京都や兵庫からでも気軽に来れそうな気がするが、隣接した都道府県でも場所によっては片道で3000円以上かかるケースもあり、この交通費が捻出できないために夢を諦めた子も多数いたと聞いている。

現在、コロナがきっかけで歌唱審査やダンス審査などは簡単なものであれば自宅の部屋からパフォーマンスしてもらうという対応をとっている運営も増えてきており、極端な例になると最終面接もリモートで済ませてしまうので、一度も事務所を訪れずアイドルになれる可能性も。

もちろん、どこかのタイミングではスタッフと直接対面しないといけないのだが、アイドルを目指す過程での金銭的な負担はかなり軽減されており、実際に応募者も増えているようだ。

(休校中の退屈しのぎとしてアイドルオーディションに応募した子も多いと聞くが、意外とそのような安易な理由でアイドルになった子が大成する場合もあるので馬鹿にはできない)

在宅活動だと保護者も安心しやすい

また、「保護者の許可がもらいやすくなった」のもアイドル志望者の背中を後押ししている。

コロナの影響で握手会などファンとの距離が近くなるイベントは当分の間は開催不可能であると言われているが、

「異性との接触機会がない」

のは娘を持つ親にとっても非常に安心できるポイント。

配信アプリなど在宅コンテンツの普及に伴い、外出することなくアイドル活動が成り立つ下地も整いつつあり、安全が確保できるというというのは親を説得する上でこれ以上の決め手はない。

アイドルの中には、露出の高いコスプレで自宅からライブ配信をしてファンから課金してもらい、生計を立てている子がいる。

個人的には握手会よりリスクの高い活動をしているように思えるのだが、親は反対していないらしく、結局のところ親が子供を常に監視下におけるかどうかというのは予想以上に重要視されているようだ。

 

人気コンテンツ「撮影会」が激減

 

ある程度の年齢に差し掛かった時に業界から足を洗えなかったアイドルは、ズルズルとこの世界にしがみつく傾向がある。

そもそもコロナ以前から国内の雇用情勢が悪化していたことは周知の事実だが、女性も30歳前後をボーダーラインに再就職が難しくなってくるのは仕方のないところ。

アイドルとしてのピークを過ぎて人気も頭打ちになってしまったアイドルがどうなるかというと、

  1. 企業イベントのアシスタント
  2. 新商品サンプルの配布
  3. パーティーコンパニオン

などの仕事をしたりする。

特に新商品サンプルの配布などはほぼティッシュ配りと同じ扱いであり、パーティーコンパニオンもセクハラの危険と隣り合わせだが、生活を維持するためにはやむを得なくしているアイドルもいる。

だが、このような副業自体、コロナの影響による自粛によってほとんど全ての仕事がキャンセルになっているのが現在の状況。

とりわけ、アイドルの副業として命綱的な役割を果たしていたのが「撮影会」である。

撮影会

 

撮影会は1時間当たりの報酬単価が最低でも5000円以上と非常に効率よく稼げるコンテンツで、事務所の中間マージンを差し引いたとしても他の副業よりは確実にまとまった収入が期待できる。

特にフリーランスになるとカメラマンからの報酬を全額直接受け取れるうえに、個人的に信頼しているファンに対して「レンタル彼女」のような形で日帰りデートと撮影会を組み合わせるサービスの提供により1日当たり数万円を手にすることも可能。

更に補足するなら、撮影会を積極的に利用するファンは高価なカメラを所持していることが多く、社会的地位もあって平均の年齢層も高め。30歳を過ぎたアイドルでも比較的需要があるというわけだ。

しかし、この撮影会関連の仕事の日程がコロナによって完全にリセットされてしまい、自立している年齢の中堅~ベテランアイドルが崖っぷちに立たされている事実が見られる。

撮影会頼みだったアイドルが現在生活の足しにと活用しているのが、個人オンラインショップの最大手である「BASE」での自撮りプロマイド販売。

また、最近話題となっている、先着5名の購入者がアイドルから直接メッセージ付きの写真データをもらえる異色のサービス「Only Five」なども認知度が急上昇している。

ライブもできず、かといって副業も失ったアイドルにとっては経済的に苦しい状況が続くと思うが、2020年夏頃から年末にかけての約半年が彼女達にとっての正念場となりそうだ。

 

コンカフェ界とアイドル界の間の人材流動が活発化


いわゆる「自粛警察」と呼ばれる人間達の圧力により営業を自粛せざるを得なくなり、廃業に追い込まれた飲食店は枚挙にいとまがない。

ところが、この自粛警察の監視を潜り抜け、自粛期間中も堂々と営業を続けていた唯一と言ってもいい業種がある。それが「コンカフェ」(コンセプトカフェ)である。

 

ちなみにコンカフェとはアニメやゲーム・コスプレなどのオタク的要素をコンセプトとした飲食店全般を指す名称。

メイドカフェとコンカフェの違いはよく聞かれるところだが、コンカフェという大きな括りの中にメイドカフェが含まれているという構図だ。

コンカフェとメイドカフェの違い

システムがメイドカフェと同じであったとしても、衣装が女海賊だったり氷の要請だったりするとメイドカフェとは呼ばず、「氷の世界をテーマにしたコンカフェ」となる。

逆に、従業員が全員メイド服でも、オタク的な会話が一切できなかったりメイクがギャル系だったりするとコンカフェの要素が無くなるため、単なる「メイドの恰好をしたガールズバー」扱いとなってしまう。

 

ではこのコンカフェだけがなぜ営業自粛を免れたかというと、飲食店と水商売の中間のような曖昧な位置付けのシステムを売りにしているため、

「よく分からないものはスルー」

という感じで自粛警察がノーマークだったというのもラッキーな要因。

 


2020年12月には

スタッフ全員元アイドルで元SKE6期生 佐々木柚香もいることで話題になった渋谷「idoRe: (アイドリ)」

元NMB  川上礼奈(1期生 チームMキャプテン)が大阪にプロデュースした「あにまるふぁ〜む」

がオープンしアイドルとの相性の良さがより知られることになった。本業のアイドルだけでは食べていけない子がコンカフェで副業する率は高くなるだろう。

 

 

コンカフェ業界とアイドル業界

秋葉原ドン・キホーテ付近の町並み

コロナなどどこ吹く風で好調を維持しているコンカフェ業界、なんと自粛期間中に新店をオープンさせたところもあるほどだ。そのため、現在のコンカフェ業界は人手不足の傾向すら見られる。

さて、コンカフェ業界とアイドル業界は元々非常に相性が良く、客層が重複している割合も高い

 

自粛期間中に活動が困難になったアイドルをコンカフェにゲスト出勤させ、そのアイドルが抱えているファンをそのまま客として引っ張り込むというやり方で稼いでいたコンカフェが実は結構目立っていた。

ゲスト出勤だけでは終わらず、一旦アイドル活動を休止して完全にコンカフェの専属キャストになったアイドルも。

最近のコンカフェはステージ併設型の店舗が多く、アイドルを辞めてもキャストとしてショータイムに歌う機会もあり、アイドル自身もコンカフェ界隈への転身は特に抵抗がないようだ。

逆に、自粛の影響を全く受けなかったコンカフェキャストは体力的にも精神的にもエネルギーが有り余っており、それを見たライブハウスやアイドル運営がコンカフェキャストにライブ出演のオファーをかける例も最近増えてきている。

(関西では以前からコンカフェキャストとアイドルがライブで共演する風潮が当たり前だったのだが)

夜の名古屋駅近の歩道

ライブハウス側にも、コンカフェキャストについている常連客をライブ現場に引っ張り込みたいという目論見があることは言うまでもない。

もちろん、アイドル事務所が直営するコンカフェで所属アイドルを働かせたり、コンカフェオーナーが資金にものを言わせて在籍キャストをアイドルデビューさせるパターンは昔から存在していたが、お互いに全く接点のなかったアイドル運営とコンカフェが人材交流を図るようになったのは画期的な出来事と言える。

あと1年はアイドルがライブに出演する頻度がコロナ以前に回復することはないと予想されており、アイドルの収入面を支えるための受け皿としてコンカフェが機能していくことは間違いなさそうだ。

 

まとめ

2019年5月4日センチュリーワンマン開演直前

新型コロナがアイドル界に与える影響について、アイドル当事者達の視点を中心に書いてきた。

少なくとも今年一杯は全てのアイドルがイレギュラーな対応を求められる状況におかれており、2021年に突入する頃にはライブハウスや野外イベント等が通常開催モードに戻っていることを期待するしかない。

本文中にもあったように、「若い女性の集客力」を利用して生き延びることができたライブハウスや飲食店も実際にあったわけだが、このコロナ禍においてアイドル自身が主体性に活動できる術を見つけられたらと願っている。